前川ひな個展「DOUBLE DWELLER」

前川ひな/Hina Maekawa《DOUBLE DWELLER I》 2018, 80.3x100cm, 31 3/5x39 3/8in., oil and pigment on canvas前川ひな/Hina Maekawa《DOUBLE DWELLER IV》 2018, 31.8x41cm, 12 1/2×16 1/7in., oil and pigment on canvas前川ひな/Hina Maekawa《CAVERN III》 2018, 41x31.8cm, 16 1/7x12 1/2in., oil and pigment on canvas

 

前川ひな個展「DOUBLE DWELLER」
2018/6/9(土) – 6/30(土) 12:00-19:00  (日、月、祝 – 休廊)
オープニング・レセプション 6/9(土) 17:00-19:00

 

前川ひな
1990年 千葉県市川市生まれ。
詳しいCVはこちら

 


 

前川はこれまで、外部デバイスに頼らず、身体を通じて記憶や情報が伝えられていた魔術的社会のアートに着目し制作してきました。
その制作はフランセス・イエイツらによる記憶術研究と、ダンダス、キャンベルらが発展させた口頭伝承の研究である比較民俗学、神話学の構造分析を下敷きにしています。

 

中世西欧で発展したポピュラーな記憶術のひとつに場所法(メソッド・オブ・ロキ)があります。
今日マインド・パレスとも呼ばれるこの技法は、脳内に仮想の宮殿や劇場、街を作り、100を超える部屋や壁にオブジェクトを配置し、そこに記憶したい事柄を貼りつけていくというものでした。
当時の記憶術の指南書にはしばしば聖書、ギリシャ神話、カバラなどからのアイコンが記憶術に用いるべき図像(イマギネス)として現れますが、それらは彼女の作品においても原型的な要素となっています。

 

前川は記憶術を知る以前、幼少期より似た方法──間取りのイメージとともに文学の内容を記憶していました。
その経験が記憶の定着しやすさと空間の関係、神話/民話の登場人物における、物語を物語るためだけに存在する平面的で一元的なキャラクターの特異性に興味を抱くきっかけとなっています。
書物に付箋を貼るように、記憶に印と鎖をつけるという発想に基づいた記憶術。
それに対し現代社会におけるイメージは印だけが浮遊し、鎖は消えるかまたは自動的に生成されていると前川は述べています。

 

本展では記憶術と魔術的社会のコスモロジーをモチーフにした「DOUBLE DWELLER」シリーズ、
神話/民話におけるモチーフ素を引いた「CAVERN」「PROGENITOR」シリーズを展示いたします。